西の魔女が死んだ
映画化されたことで話題になって知っていた本。
この作家さんを気になりつつも、なかなか手に取る機会がなく
今回はじめて読みました。完全にはいりこんでしまった。しまったなあ。
「西の魔女」は英国人のおばあちゃん。語り手は13歳の孫娘「まい」。
その歳の頃といえば、自分もちょうど難しい時期だったなと思い出しつつ。
バスの中で読んでしまって、うっかり泣き。
何か余計な事を言い過ぎて、相手を傷つけてしまったときほど
いつまでも長いこと、心に重い影を引き摺ってしまうので
だったら、私は貝になりたい、と思うわけで。
一つの愚行に対して、一つの反省をしたら、一つの許しが必ずある、
というふうにシンプルになったら簡単でいいのに。とか、
あほなことを考えながら、珈琲豆ぶらさげて帰ってきました。
そうしたら、自分が許す側に回ったときが、一番試練の時になるけども。
きっと、許す側に回った時が、大人の立場になった時なのだろうけども。
私はまだまだ精神的に中坊なのか、という結論。
- 作者: 梨木香歩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/08/01
- メディア: 文庫
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わたしのマトカ
先日「今日はムーミン外交Day」イベントを観に行きました。
ホンモノのムーミンとミイが来る!というので、
映画『かもめ食堂』にハマっている友人家族と一緒に。
イベントには、通訳も兼ねて森下圭子さんもいらっしゃってました。
『かもめ食堂』では現地コーディネーターもつとめられたという
森下さんを、実はお恥ずかしながら初めてその会場で知ったのですが
まるで、“はんぱなく明るいポジティブ” が服を着ている、みたいな
なんと素敵な人なのだろうと、隣の生ムーミンを忘れるくらい
気になってしまったのでした。
会場には、お客さんエリアに『かもめ食堂』のミドリさんこと
片桐はいりさんもいらっしゃっていて、我が友人家族は
「ミドリさんだ!」と浮き足立っていたのでした。
(私が『かもめ〜』を観たのはずいぶん前で、実は記憶がおぼろげ)
話は(すっかり)変わって。
近所のレンタル屋さんが、旧作100円キャンペーン中だというので
ちょっと立ち寄ったわけです。そしたら偶然カウリスマキ監督の
映画『過去のない男』が視界にとびこんで来たので、借りまして。
観たらば主役の男の人が、どこかで見覚えがある。誰だっけなぁと。
思い出せぬまま観終わって無念。
そうこうしているうちに、図書館から「予約の本が届いてます」の連絡。
実は、前出のイベントで、片桐はいりさんをお見かけした晩に、
図書館に片桐さんの著書『わたしのマトカ』の予約を入れておいたのでした。
- 作者: 片桐はいり
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/03
- メディア: 単行本
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いつも通り図書館に行って、受け取って、読み始めたところ、
これがたいへんな盛上りを。うっかり、そしてすっかり、
通勤時間と会社のお昼休みで一気に読んでしまいました。
おもしろくて、本当におもしろくて、もっと続いてほしかった!
話の中には、先日の生ムーミンを置き去りにするくらい
印象深かった森下圭子さん(ヒルトネンさん)がたびたび登場。
フィンランド人の“感情の通訳”が面白すぎます。
「これでもこの人たち、目いっぱい楽しんでるんですよ」
先日のイベントでお目にかかっただけだが、ヒルトネンさんが
笑顔でそう言っている姿が目に浮かんでしまった。
そして完全にうっかりしていたが、『過去のない男』ペルトラさんは
『かもめ食堂』に出演していたのでした。美味しいコーヒーの淹れ方を
教えてくれた男性でした。いずれの役柄もそのまま、
映画の外でも、同じように、期待通り、寡黙だったんですね。
(2007年年末に51歳で天に召されたと知りました。ご冥福をお祈りします。)
さて、なかでもいちばん好きな話は『路面電車に乗って』です。
ほっとしたり感心したりしているうちに、もう博物館が見えてきた。降りながら、わたしは振り返って、その運転手さんに頭を下げた。するとどうだろう。今まで仏頂面だった彼が、まるで奈良の古寺の仏さまみたいに、少しだけ口のはしを上げて、大きくふたつ、うん。うん。とうなずいたのだった。
これには痺れました。フィンランド人が、感情をあまり顔に出さないさまを
おもしろおかしく書かれている中で、この逸話には
ギュッとココロを掴まれるものがありました。
いま、まさにフィンランドに対しての興味のバロメーターの針が
ちょっとずつ上がってきているところでしたが、この話のお陰で
ぎゅーん!と振り切ったかんじです。フィンランド大好き!です。
はいりさんもヒルトネンさんもペルトラさんも、
この本を手に取っている間、わが脳内シアターに
所狭しと現れて、楽しませてくれました。
うんと遠いのに、気持ちはなんだかとっても近い。
この一冊に出逢ったおかげで、フィンランドは私にとって
「いつか行きたい国」から「近いうちに行く国」に変わりました。
フィンランド語教室にも通い始めちゃうんだから。
キートス!
全身翻訳家
どうも私は勝手に鴻巣友季子さんが大好きなので
他に読まねばならぬ本が山積しているにも関わらず
(ちょっとだけつまみ読み)のつもりが一気読み。
毎度、鴻巣さんの本を手に取るたびに思うことがある。
悔やんでも悔やみきれない、というべきか。
自分は幼少期に「本を読む」ということをまったくしてこなかった。
あのだらだらと過ごした小学校・中学校・高校時分に、
古典文学をひととおり読んだりしていれば、と。
今の自分はもうちょと違う眼鏡ですべてを見れていたのではないかと。
と、悔やんでいてもしようがないので、いまから粛々と読み重ねつつ
修行の道を往きますが。
ベニヤ張りの学習机を前に『あしながおじさん』のページをめくる自分の姿が、いまも目に浮かんでくる。あの子供部屋から、先日『嵐が丘』を訳し終えたこの仕事場までは、こうして振り返って見ると、なんだ、まっすぐの一本道じゃないかと思うが、歩んでいるときはずいぶん険路悪路のくねくね道に感じたものだ。
という一文を読んで、しばらく固まりました。
私もいつかこう振り返ることができるように精進します。
あと、勝手にシンクロシリーズでは、本を読む時に
「忘れがたい文章に出逢うと付箋を貼る」とのこと。
実は私もその癖が。
特に鴻巣さんの本を読んでいるときは
付箋がばっさばっさになっております。
- 作者: 鴻巣友季子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2011/08/09
- メディア: 文庫
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フィンランド語は猫の言葉
- 作者: 稲垣美晴
- 出版社/メーカー: 猫の言葉社
- 発売日: 2008/04
- メディア: 単行本
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ずっと見ていたくなるほど可愛いキッサ君とヒーリ君がカバーに佇む本。
「キッサ」はフィンランド語で猫、「ヒーリ」はねずみを表すそうです。
一気に読み終えたあと、しげしげと手に持ったまま見つめてしまいました。
本のタイトルの由来は、著者が渡芬中に書いたコンクール用の論文の題名。
フィンランド人は、相づちに「ニーン」と言うことからきているようだ。
最近ちょっと話題のフィンランド大使館の公式ツィッターアカウントの
中の人によると「フィンランド人は日本人ほど相づちをうちません」らしいので
いつかネイティブの人にであった時に、確認しておかなくちゃな。
さておき、内容。
著者の稲垣美晴さんのフィンランド留学記、といえば簡単ですが
今ほど同じルートでの留学経験を持つ先人が多く存在しなかった時代。
振り返れば、一冊のおもしろい本に仕上げられるけれど、
当時はきっと、相当な努力をなさったに違いない。
「あっ、とろろろろろろろろろろろろこんぶが入ってる!」
ぜひ、そんな風にうっかり巻き舌ってみたいものです。
しかし文章がおもしろ過ぎるせいで、いいんだかわるいんだか、
複雑なフィンランド語に対して、拒絶感よりも親近感を抱いてしまった。
きっと近いうちに「フィンランド語を勉強する!」とか言い始めるだろう。
ともあれ、下記は本の中に登場した本などのメモ。
いつか読んだり聴いたりしておかねば。
- 東山魁夷著『白夜の旅』(新潮文庫)
- 舘野泉『フィンランド・ピアノ名曲選』(東芝EMI)
- 金田一春彦著『日本人の言語表現』(講談社現代新書)
- 千野栄一著『言語学のたのしみ』(大修館書店)
- 渡辺照宏著『外国語の学び方』(岩波新書)
- 稲村博著『日本人の海外不適応』(NHKブックス)
- 寿岳章子著『日本語と女』(岩波新書)
- フィンランドのジャズピアニスト、ヘイッキ・サルマント
あと、建築家のアルヴァー・アールト氏は知っていたものの
我が脳内にて、フィンランド出身というデータをスルーしていたようで。
なぜかずーっと捨てられずに保管していた2002年の X-Knowledgeムックの
Vol.1はまさしくアールト特集。確かにフィンランドって書いてある。
わたしの目は、ふたつの節穴だったというわけで。。
たいした問題じゃないが ―イギリス・コラム傑作選ー
英語精読の勉強において、日頃著書にお世話になっている行方昭夫氏編訳の一冊。
以前から、イギリスには親近感を抱いていたわけで。
それはイギリス産のMr.ビーンと、日本産の志村けんだったり、
島国根性だったり、あれとかこれとか(適当)。
なかでもガードナーによる『「どうぞ」をつけるつけない』は
日本人にはかなり理解し易いものだった。
この間の朝、シティーにある会社の若いエレベーター係が客をエレベーターから追い出し、その怪しからぬ罪で罰金を課されたという記事があった。問題は「どうぞ」をつけるかどうか、という事だったという。告訴人はエレベーターに乗ると「最上階」と言った。係の青年は「最上階―――どうぞ(ルビ:プリーズ)」と言うように要求したが、それを拒まれたので、客の指示に従わなかっただけでなく、エレベーターから追い出したのであった。
ただ、その礼儀の必要性に頷く日本人は多くとも、
追い出すまでするのが、違うところかもしれませぬ。
この章の中に登場する、バスの親切な車掌に私も逢いたい。
他にもルーカスの『思いやり学校』を読んで、
同じような学校が世界中にあればいいと思った。
あと、リンドの『時間厳守は悪風だ』には触れておかねば。
時間に余裕をもって行動できる人間は体力を常に温存して生活できるが
時間を守れない人間は、常に、飛び起きる瞬間から体力をフルに使い
ろくに朝食もとれぬまま走って電車に飛び乗り、息をつく暇もない。
そう言われればそうだ。(開き直った人間は別だが)
おもしろい考え方でした。
ちなみに『くまのプーさん』の原作を手がけたミルンのコラムも収められています。
たいした問題じゃないが―イギリス・コラム傑作選 (岩波文庫)
- 作者: 行方昭夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/04/16
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シズコさん
この本に辿り着いたのは、先日読んだ鴻巣さんの書評集「本の寄り道」で
取り上げられていたからでした。人間、自分と似た悩みや問題を抱える人に出逢うと共感するものでして。
四歳位の時、手をつなごうと思って母さんの手に入れた瞬間、チッと舌打ちして私の手をふりはらった
それに近い経験をしたことがある。自分の場合は中学二年の時だから、前後の記憶も鮮明すぎる。あれは一生忘れられない。
その人は私の顔を見てすぐ云った。「あなた、お母さんとうまくいってないでしょ」
息が止まりそうだった。私なんて甘いもんじゃないか。それなのに人相がそうなっているのか。
少しながらも好意を寄せていた知り合いの母親が、手相を見ることが出来るというのでお願いしたら、苦々しい表情を浮かべながら、まっすぐ私に言い放ったのが「親との縁が薄いわね」。人相どころか手相にも出てるらしい。もちろん、この素人占い師を「お義母さん」と呼べる日が来る気がしないので、自然と息子とも疎遠になったのだが。
トラウマ部分の類似点はいくつも挙げ続けられるのだが、この本の内容はそれが目的に非ず、実母との和解、"ゆるし” で締めくくられている。果たして私はその境地に至れるのだろうか。母が「女」であることを “ゆるす” 日がくるのだろうか。
あいにく、まだ全く想像がつかないけど。
- 作者: 佐野洋子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/10/01
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歴史をかえた誤訳
またしても、自らの進む道が恐ろしくなるような本を手に取ってしまった。
なかなか薄い文庫本サイズだったので、通勤朝晩で読み終わるかしらん、
なんて軽く思っていたら、いちいち(ハッ)とさせられる内容満載で
読み終わった本日すでにグッタリ。
「日本はほえるライオンではなく、ハリネズミになりたい」発言を
日本語から英語への翻訳について。日本のイメージの “ハリネズミ”
そのままのものが生息しないアメリカ人にニュアンスを伝えるには。
イコールのものが翻訳先に無い場合、 、、考えただけで怖い。
語り手の文化か、受け手の文化か、どちらに軸を置くべきか。
もう、モールス信号とか手旗信号とかが世界共通語になればいいのに。
ともあれ、現実逃避してばかりいられないので、
本の中に登場した参考文献で気になったものをメモ:
・『超明快訳で読み解く日米新ガイドライン』日本評論社
・『不実な美女か貞淑な醜女か』米原万里著(新潮文庫)
・『やがて哀しき外国語』
・小説『黒船』吉村昭著(中公文庫)オランダ通詞 堀達之助の話
・『訳せないもの』(サイマル出版会)
・『翻訳を考えるー日本語の世界・英語の世界』中野道雄著(三省堂)
・"Men Are from Mars, Women Are from Venus" by John Gray (HarperCollins)
シーボルト事件も、後日ちゃんと調べておこうと思う。
- 作者: 鳥飼玖美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/03/28
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