わたしのマトカ

先日「今日はムーミン外交Day」イベントを観に行きました。
ホンモノのムーミンとミイが来る!というので、
映画『かもめ食堂』にハマっている友人家族と一緒に。
 
イベントには、通訳も兼ねて森下圭子さんもいらっしゃってました。
かもめ食堂』では現地コーディネーターもつとめられたという
森下さんを、実はお恥ずかしながら初めてその会場で知ったのですが
まるで、“はんぱなく明るいポジティブ” が服を着ている、みたいな
なんと素敵な人なのだろうと、隣の生ムーミンを忘れるくらい
気になってしまったのでした。
 
会場には、お客さんエリアに『かもめ食堂』のミドリさんこと
片桐はいりさんもいらっしゃっていて、我が友人家族は
「ミドリさんだ!」と浮き足立っていたのでした。
(私が『かもめ〜』を観たのはずいぶん前で、実は記憶がおぼろげ)
 
話は(すっかり)変わって。
近所のレンタル屋さんが、旧作100円キャンペーン中だというので
ちょっと立ち寄ったわけです。そしたら偶然カウリスマキ監督の
映画『過去のない男』が視界にとびこんで来たので、借りまして。
観たらば主役の男の人が、どこかで見覚えがある。誰だっけなぁと。
思い出せぬまま観終わって無念。
 
そうこうしているうちに、図書館から「予約の本が届いてます」の連絡。
実は、前出のイベントで、片桐はいりさんをお見かけした晩に、
図書館に片桐さんの著書『わたしのマトカ』の予約を入れておいたのでした。
 

わたしのマトカ

わたしのマトカ

 
いつも通り図書館に行って、受け取って、読み始めたところ、
これがたいへんな盛上りを。うっかり、そしてすっかり、
通勤時間と会社のお昼休みで一気に読んでしまいました。
おもしろくて、本当におもしろくて、もっと続いてほしかった!
 
話の中には、先日の生ムーミンを置き去りにするくらい
印象深かった森下圭子さん(ヒルトネンさん)がたびたび登場。
フィンランド人の“感情の通訳”が面白すぎます。

「これでもこの人たち、目いっぱい楽しんでるんですよ」

先日のイベントでお目にかかっただけだが、ヒルトネンさんが
笑顔でそう言っている姿が目に浮かんでしまった。
 
そして完全にうっかりしていたが、『過去のない男』ペルトラさんは
かもめ食堂』に出演していたのでした。美味しいコーヒーの淹れ方を
教えてくれた男性でした。いずれの役柄もそのまま、
映画の外でも、同じように、期待通り、寡黙だったんですね。
(2007年年末に51歳で天に召されたと知りました。ご冥福をお祈りします。)
 
さて、なかでもいちばん好きな話は『路面電車に乗って』です。
 

 ほっとしたり感心したりしているうちに、もう博物館が見えてきた。降りながら、わたしは振り返って、その運転手さんに頭を下げた。するとどうだろう。今まで仏頂面だった彼が、まるで奈良の古寺の仏さまみたいに、少しだけ口のはしを上げて、大きくふたつ、うん。うん。とうなずいたのだった。

 
これには痺れました。フィンランド人が、感情をあまり顔に出さないさまを
おもしろおかしく書かれている中で、この逸話には
ギュッとココロを掴まれるものがありました。
いま、まさにフィンランドに対しての興味のバロメーターの針が
ちょっとずつ上がってきているところでしたが、この話のお陰で
ぎゅーん!と振り切ったかんじです。フィンランド大好き!です。
 
はいりさんもヒルトネンさんもペルトラさんも、
この本を手に取っている間、わが脳内シアターに
所狭しと現れて、楽しませてくれました。
 
うんと遠いのに、気持ちはなんだかとっても近い。
この一冊に出逢ったおかげで、フィンランドは私にとって
「いつか行きたい国」から「近いうちに行く国」に変わりました。
フィンランド語教室にも通い始めちゃうんだから。
 
キートス!