なぜ記憶が消えるのか 神経病理学者が見た不思議な世界

Amazonでおすすめ欄に掲載されて、興味深いテーマだったもんで
図書館で予約したら、既に区立図書館の「保存庫」にしまわれていた。
取り寄せてみたところ、23年前に出版された本と知りました。
 
本物の精神科医による本。各章は、病名ごとに設定されている。
第1章に挙げられる病名は「一過性全体健忘」、第2章は「ラチリスム」、第3章は「パーキンソン病」、第4章は「鎖骨下動脈盗血症候群」、、と14章まで続く。おそらく、一章ごとに小説一作品できるのではないかと思うのだけど、そこはお医者さんだからなのか、読み手を無駄に期待させるでもなく、あっさりした味付けで、事実に沿ってすすめられてゆく。ある意味、ネタの使い方がとても贅沢な一冊。

第2章の「ラチリスム」(現代では “ラチリズム” という呼び名の方が一般的らしい)を読んでからは、正直まめを食べるのが怖くなった。ある特定の種に「神経毒」を持つものがあるなんて知らなかったもの(20年以上前の本だから、現代でもまったく当てはまるとはいえまいが)。大好きな豆を山盛り食べていたら、、という話じゃなくて、戦時中の強制収容所で栄養源として大量に与えられていたヤハズエンドウが、その神経毒で彼らの足先から麻痺させ、歩行障害が始まり、死に至らしめたという。
※本の中では「ヒヨコマメ」となっていたけど、今われわれがよく目にする「ヒヨコマメ」とは異なるようです。一安心。

第6章に出てくる「ハンティントン病」(現代では “ハンチントン病” が一般的)。身近で出逢ったことがない病名だったが、海外ドラマの『Dr.HOUSE』にて、研修医?13番がハンチントン病という設定だった。ドラマで扱われるくらいなので、治療すれば完治するものかと思っていたら、それは今の時代でもなかなか難しいようです。
 
で、いま感想書きながら思い出しましたが、私はタイトルにある「なぜ記憶が消えるのか」を知りたかったのだけど、確かに副題にあるとおりこの本は「神経病理学者が見た」なので、「脳」じゃなくて「神経」の話だったんだな。
 
うっかりでした、というオチ。

なぜ記憶が消えるのか―神経病理学者が見た不思議な世界

なぜ記憶が消えるのか―神経病理学者が見た不思議な世界