縮図

okaden2007-06-15

 
夕焼けに広がる雲が真っ赤に染まっていた。
それは恐ろしいくらいの赤色。
驚いてその場に立ち尽くした。
 
カメラを構えたら、どうしても手前の建物が入ってしまうのが気になる。
少し小走りしてベストポジションを探す。
進んだ先には今度電柱が立ち、そこから電線が大量に延びている。
もうちょっと先ならいいかもしれない、とまた小走りをして進む。
その先でもまだ気になることがあり、またもうちょっと先へ走る。そしてまた走る。
そうこうしているうちに、一番最初に見た赤色はいつの間にか薄らいでしまった。
暫し、最初に撮っておけばよかったなと考える。
 
そういえば私が撮りたかったのは、一番最初の「赤色」だった。
それを、見栄えを理由に、もっと上、もっと上、と走った先で
結果として得られたのは、妥協の構図と、薄らいだ赤色。
 
空に薄らいでしまった赤色が暗闇に変わる頃。
帰路を歩きながら考える。もっと上って、なんのことだろう。
 
さっきの5分で起こった事は、まるで自分の人生の縮図のようだな。
一番大事なものを、私は見失って走り続けていたんじゃないか。
 
切なくてその場に立ち尽くした。